過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第26章 最後の眷属『ヤンデレ』
リヴァイが冷静に分析を終え、スナップブレードを構え直すと、
隣にミケが並んだ。
化物とタイマンを張る程愚かではないので、
ミケの助成を受け入れたリヴァイが彼と共に
ヒモロギに攻撃を仕掛けようとした瞬間、
突然木々の合間から投擲された槍がヒモロギの腹部に刺さり、
勢いそのまま彼はその身体ごと大木に縫い付けられた。
宙吊り状態になったヒモロギは苦しそうに血を吐いて呻き、
何が起こったのかわからず驚愕する兵士達はその場から動けなかった。
余りにも突然の事にリヴァイやミケも一瞬動揺したが、
すぐ我に返ると他の兵士達に命令する。
「気を抜くな!周囲に気を配れ!」
リヴァイの声に兵士達は我に返り、
槍が投げられたと思われる方角を注視するが、
そこに何の気配も感じられない。
地上でその様子を見ていたナナシはエルヴィンに
「もう一人には絶対手を出すな」と叫ぶ。
「もう一人」と断言するナナシにそれが彼の身内の一人だと
気づいたエルヴィンは眉根を寄せた。
「君の身内だからと言って甘い顔は・・・」
「違う、お主らでは勝てんと言っておるのだ。
無駄な犠牲者が増えるだけで益は無い。・・・それに、
ヒモロギを真っ先に攻撃した時点で此方に対して害意は無い」
「そうかもしれないが・・・」
いつヒモロギのように此方に対して敵意を向けるか
わかったものではない。
「ナナシの言う通りだぜ。今日のとこはそこの馬鹿を
連れ戻しに来ただけだ」
不意に男の声が頭上から響いてきたので、
ハンジとナナバはスナップブレードを構えた。
樹の枝の上には金髪長身の男が立っていて、
此方を見下ろしていた。
オールバックにした髪に、黒い服と長めのロングコートを着た男は、
以前エルヴィン達と会った事のあるナナシの眷属のジェリーだった。