過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第26章 最後の眷属『ヤンデレ』
恐る恐る腕の中のナナシを見遣ると、
彼は俯いたまま口を引き結んでいた。
ナナシの様子からヒモロギが言った事が本当なのだと知れ、
エルヴィンの中に激しい動揺が走る。
すぐに真偽の程をナナシの口から聞きたかったが、
エルヴィンの口は動かなかった。
一瞬で口の中がカラカラになり声が出ない。
そこで漸く自分が恐怖で動けないのだと気付いた。
ナナシ自身の口から余命を聞く事が恐いのだと・・・・。
動揺のせいで動けないでいると「エルヴィンっ!?」という呼び声が聞こえ、
リヴァイ達が現場に駆けつけた。
左腕から血を流すナナシに、その身体を支えるようにして並ぶエルヴィン、
腹部から血を流している見知らぬ男の存在を確認した調査兵団の兵士達は、
エルヴィン達を守るように囲み、黒髪の男を取り押さえようと
武器を構えて慎重に包囲した。