過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第26章 最後の眷属『ヤンデレ』
狂ったように泣き喚くヒモロギの言葉を聞いて、
ナナシは初めて聞いた彼の本心に震えた。
自分は彼が狂ってしまう程、酷い仕打ちをしてきたのだ・・・。
絶望にも似た思いを抱き、ナナシが目を伏せていると
エルヴィンが震える身体をそっと抱きしめ囁いた。
「君は何も悪くない。自ら信じる道を歩んできた君を責める資格は彼に無い。
自分の想いを告げず従属に甘んじてきた彼が悪いんだ」
「・・・エルヴィン・・・しかし・・・」
本当にそうなのだろうか?
自分が気付かなかっただけで彼が自分に愛を囁いてくれていたとしたら・・・。
「それにどうせナナシの命は保ってあと一ヶ月だろっ!?
たった一ヶ月で『心臓』を探し出せるっていうのかっ!?」
喚き続けるヒモロギの言葉に今度はエルヴィンが絶句した。
「・・・・なん・・・だって・・・・?」
エルヴィンは目を大きく見開き口許を戦慄かせた。
ヒモロギは狂っているが、ナナシへの想いは本気で、
だからこそ彼の言葉を戯言として受け止められなかった。
ナナシの体調は確かに最近良くなかったようだが、
まさか・・・っ!という思いがエルヴィンの中で渦巻く。