過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第26章 最後の眷属『ヤンデレ』
「大丈夫か!?ナナシ!」
「・・・あぁ、問題ない」
エルヴィンの心配そうな声にそう答えたが、
左腕からは血が流れているので隠せるものでは無い。
案の定、出血する腕を視認したエルヴィンは憤怒の表情を
浮かべながらハンカチで簡易の止血を施すと、
ナナシの短剣を取りヒモロギに対峙した。
「止せ」というナナシの言葉をエルヴィンは無視する。
「可哀想なナナシ・・・。そんな男を庇うから怪我しちゃうんだよ。
でも大丈夫。その男殺したら俺が優しく手当してあげるから」
「・・・・大事な者を傷つけて、何故そんな事が言えるんだ?」
「五月蠅いな・・・部外者は引っ込んでろよ、おっさん。
あんたの実力じゃ俺には勝てないんだから、さっさと死ねよ」
「・・・誰かにこんな殺意を抱いたのは、初めてだな」
グッと踏み込みヒモロギに斬り掛かるが、
ナナシと同じ護剣術で剣筋をいなされる。
力押しでは勝てないと判断し、エルヴィンは土を掴むと
それを相手の目に投げつけ目潰しをした。
甘く見ていた相手からの目潰しに反応が追いつかず、
ヒモロギは片目を潰された痛みと屈辱で喚いた。
「こっの、金髪野郎がぁぁぁぁっ!!」
まともに動けない隙を突いて短剣でヒモロギの腹に刺し刃を横に薙ぐ。
腹部からの出血をしているにも関わらず反撃してきた相手に、
深追いは禁物だとエルヴィンは距離を取るため後退した。