過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第26章 最後の眷属『ヤンデレ』
「あと邪魔なのはあんただよね。俺とナナシの仲を邪魔しないでよ、おっさん。
あんたを殺したら、ナナシは俺が連れて行く。
他の連中にも渡さないで俺一人の世界に溺れさせて、
幸せに暮らすんだ。苦痛も哀しみも無い世界で一生愛し続けるよ」
「馬鹿なのはおまえだ」
ヒモロギの言動にエルヴィンも我慢の限界を迎える。
大事な人間の薬を焼いて、無理矢理連行していき、幸せにする・・・?
そんなもの幸せであるはずが無い。
ギリッと奥歯を噛み締め、エルヴィンは蔑むような眼を
ヒモロギに向けた。
「おまえがナナシを大事だと思うなら何故薬を焼いた?
ナナシに薬を渡してくれた男達の方が余程ナナシを大事に
想っているように感じるが、おまえは何だ?ただ自分の欲求を
ナナシに押し付けて、哀しませているだけじゃないか。
そんな男にナナシをやるつもりは無い。さっさと失せろ。
目障りだ」
「失せるのは・・・おまえだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
エルヴィンの言葉に激昂したヒモロギが襲い掛かる。
隠し持っていたレイピアでエルヴィンの急所を突こうと突きを放つが、
ナナシによってそれを防がれた。
力を上手く利用されレイピアを弾かれた瞬間、
更に隠し持っていたスローイングナイフを二人に投げつけ、
ヒモロギは距離を取る。
ナナシは余裕で投げつけられたナイフを弾いたが、
弾いた刹那ナイフが爆発し、その衝撃で身体が後ろへ
吹っ飛んでしまった。
吹っ飛んだ身体はエルヴィンが受け止めてくれたので
地面との衝突は免れたが、咄嗟に顔を庇った左前膊部分に
爆発物の破片が刺さり怪我を負う羽目になって、
注意力散漫と動揺のせいで怪我を負うなど、焼きが回ったなと
ナナシは自嘲する。
爆発の瞬間、筋肉操作で肉体を強化してなければ
左腕を失くしていただろう。
破片が刺さっただけで済んで御の字だったかもしれない。