過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第26章 最後の眷属『ヤンデレ』
「ふざけんじゃねぇぞ、おっさんっ!!!」
刹那、大人しそうに見えた青年の顔が狂気に歪み、
口調も荒々しくなって怒声を発する。
「生涯を共にさせるだって?身の程を弁えろよ!
そいつはおまえみたいな奴が触れて良い存在じゃねぇんだ!
今直ぐおまえの生涯を終わらせてやるよっ!!」
ヒモロギがナイフをエルヴィンに向けて投げたが、
隠し持っていた短剣でナナシがそれを打ち落とす。
エルヴィンを庇ったナナシに、ヒモロギは大きく目を開いて
驚いたようだったが、すぐに不穏な笑みを浮かべた。
「ねぇ、ナナシ。さっきツクモさんから薬受け取ってたよね?
あれ・・・中身入ってないよ?」
「・・・薬?」
エルヴィンから怪訝な眼差しを受けながら、
ナナシはツクモから受け取ったポシェットを握り締め、
感触を確かめる。
「ツクモさんが持っていく前に擦り替えておいたんだ。
本物はここだよ」
薬の入った袋を眼前に見せつけたヒモロギは余裕の表情で
ナナシを見下ろした。
「・・・どうする?この薬無いと身体辛いよね?
渡しても良いんだけど、まずその男から離れてよ」
「・・・・・・・・・・・・」
ナナシはどうするか考えた。
薬が無ければ身体が重くなり、思うように動けなくなる上、
無理をすれば血を吐いてしまう。
しかしエルヴィンから離れたら、ヒモロギは彼を殺そうと
襲い掛かるだろう。
こんな内輪揉めのせいでエルヴィンを危険に晒したくはない。
まずはエルヴィンの身の安全を確保せねばならないだろう。