過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第26章 最後の眷属『ヤンデレ』
兵舎を出て訓練場である森まで来ると、
その人物は漸くナナシの前に姿を現した。
闇の中からゆっくり出て来たのは、
二十歳くらいの黒髪黒眼の青年だった。
一見大人しそうにも見えるその青年の顔はとても整っていて
美形と言えるだろうが、その瞳には狂気の色を滲ませており、
ナナシは警戒心を上げる。
「・・・久し振り、ナナシ。今そう名乗ってるって
ツクモさんが言ってた」
「・・・・・・・久し振りだな、ヒモロギ。何故ここにおるのだ?」
『ヒモロギ』というのが黒髪の青年の名前で、
彼はナナシの眷属の一人だった。
そして通称『ヤンデレ』。
一番気をつけなくてはならない存在だと他の眷属達から言われていたが、
ナナシは今の今までその危険性を感じていなかった。
だが、今ヒモロギの眼を見て確信した。
―――ヒモロギは「危険」だと。