過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第25章 酒盛り
「――あの光景は未だ悪夢に見る。あの男は私の目の前で
君を奪い去っていったんだ。とても許しがたい」
「・・・それは私が撃たれた時の事を言っているのか?」
「そうだ」
「私を殺す気か?ツクモが迎えに来なければ私は死んでいたのだぞ?」
「その件に関しては彼に感謝もしているし重々承知している。
だが、私の目の前でナナシをお姫様抱っこした挙句
『ナナシの事は諦めろ』と宣ったあの男の顔面に
拳を叩き込まなければ、私の気が済まない」
「・・・・・・・・・・・・」
・・・すまん、ツクモ。
お主が何故エルヴィンと会いたくないと言っていたか、
今理解した。
聡いお主はこうなる事を予見しておったのだな・・・。
ナナシは心の中でツクモに詫びを入れながら、
エルヴィンを睨んだ。
「もしもツクモを半殺しにしたり暴力を振るったら許さぬからな、
エルヴィン!ツクモは私の大事な家族だ。万が一手を出したら・・・・」
「手を出したら・・・?」
ジッと瞳孔が開いた眼で見つめてくるエルヴィンに
「うっ」と言葉に詰まる。
勢いで話し始めてしまったが、どうするか何て考えていなかったのだ。
ナナシはテンパった頭で、何とか言葉を発した。