過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第25章 酒盛り
「嫌なら飲むな。本来は一人で飲むはずだった酒を分けてやったのだ。
ありがたく思え」
不遜な態度で応じるナナシに文句を言えるはずもなく、
四人はお猪口に入ったお酒を口に運んだ。
口に入れた瞬間広がる味わったことのない美酒に言葉を失った四人は、
空になったお猪口を凝視する。
「味が濃い割に、さっぱりとした味わい・・・」
「まさか、こんな酒があるとは・・・」
「匂いも華やかだ」
「うっまーい!!もう一杯!!」
エルヴィン、リヴァイ、ミケ、ハンジの口に合ったらしいが、
残念ながらガバガバ飲ませるほどの量は無い。
ナナシが酒瓶を自分の後ろに隠し、黙々とおでんを食していると、
そんなナナシにハンジは管を巻くように絡んだ。
「ねぇねぇ、ちょっと~!その態度は酷いんじゃないのっ!?
酒は飲むためにあって、後生大事に持っているものじゃないでしょう!?
飲ませてくれたって良いじゃない!」
「ざるやうわばみは自分達で持ち寄った酒でも飲んでろ。
私の実家で作られた酒は質は良いが量が少ない」
「ナナシ冷た~い!!」
泣きついてくるハンジを軽くあしらいつつ、
ナナシはおでんを駆逐する為、箸を進め続けた。