過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第25章 酒盛り
ナナシの疑問に気づいた三人が微妙な表情をしながら
不自然に風呂場へ続く扉から目を逸らした瞬間、
そこから風呂上がりと思われるエルヴィンが姿を現した。
「あぁ、良いお湯だった!・・・おや、ナナシ?
やっと帰ってきたんだね?てっきりまた他の男と会っていたのかと
心配していたよ」
さらっと嫌味を言いながら手を広げて近づいてくる男に
恐怖を覚え、ナナシは後退る。
「何故逃げるんだい?何か私に後ろめたい事でもあるのか?」
「後ろめたい事など全然無い・・・が、お主が恐い」
「恐い?おかしな事を言うね。君を一途に愛している私の
一体どこが恐いと言うんだい?」
ニコニコ爽やかな笑みを浮かべているエルヴィンだが
内心穏やかではないだろう。
じわじわ追い詰めてくるエルヴィンに恐怖を感じながらも、
ナナシはある事を思い出し、彼の横をすり抜けて風呂場の中を確認した。
「・・・おい、ここには私の洗濯物が干してあったはずだが、
どう見ても足りないぞ。どういう事だ?」
「さて、美味しいお酒のご相伴に与ろうか」
あからさまに話題を変えたのを見て、ナナシはエルヴィンに
飛び蹴りをかまし床に抑えつけ、ゴソゴソとポケットの中を弄った。
すると、数あるポケットの中からナナシの下着が出てきたので
ナナシはギッとエルヴィンを睨みつけた。