過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第25章 酒盛り
「何が望みだ?ゲルガー、一応聞いてやろう」
「ふっふっふ、じゃあその手に持っている酒全部・・・」
「コップ一杯ならくれてやろう」
ゲルガーが言い終わる前にナナシがそう提案すると、
彼は「はぁぁぁっ!?」と声を荒らげた。
「冗談だろっ!?たったコップ一杯って、ふざけんな!!」
「ふざけてるのはお主だ。良いのか?この酒はこの機を逃せば
一舐めすら出来ぬ貴重な酒だぞ?それをコップ一杯も
やろうという私の寛大な申し出を断ると?」
「どこが寛大だっ!?エルヴィンにチクって・・・っ!!」
ナナシはゲルガーが言い終わる前にその顎をガッと掴み、
威圧を込めた笑みで対峙した。
「一言でも漏らしてみよ。好きな酒が二度と飲めん身体にしてやる」
「す、すみませんでした!!コップ一杯で充分です!!」
土下座して許しを請うゲルガーは以前娼館に行った際、
襲撃を受けた事を思い出していた。
瞬殺されたが、あの時感じた殺気は巨人を前にした時と同等か
それ以上の恐怖だったなと思い出し、身震いする。
ここは大人しくコップ一杯の貴重な酒で手を打った方が
無難だろうとゲルガーの直感が告げていた。
結局コップ一杯のお酒を手に入れたゲルガーは、
嬉しそうに走り去っていったのでナナシはホッとしていたのだが、
ゲルガーに酒を与えたことによりこの後騒動が起こるなど
思いも寄らなかった。