過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第25章 酒盛り
自分はつくづく眷属に恵まれたなぁと心をホクホクさせていると、
廊下の向こうからゲルガーがやって来て
ナナシの持っている酒瓶を認識すると目の色を変えて
食いついてきた。
「ナナシ!何だ!?その手に持っている酒は!!
重そうだな、持ってやろうかっ!?」
「いや、いらぬ。さっさと向こうへ行け」
持たせたらそのままトンズラするだろうが、
この酒バカが・・・と心の中で悪態を付きつつ、
ゲルガーを突き放したが、彼は全くめげなかった。
その情熱を是非壁外調査に向けてもらいたいものだ。
いっそ壁外調査の時、ゲルガーの鼻先に酒をぶら下げておく方が
やる気が出るんじゃないか?
ナナシがそう考えながらゲルガーを無視していると、
彼からとんでもない言葉が飛び出した。
「あーあ、さっきナナシが男と会ってたってエルヴィンに
チクっちまおうかな~?」
ゲルガーのその一言にナナシはビクリと身体を強張らせる。
別にナナシにとって疚しい事は何もない。
だが、あの嫉妬心の塊の男にツクモと会っていた事がバレれば
どうなるか想像すると、とても面倒臭くなった。
とても癪だが、ここはゲルガーに賄賂を渡して
黙っていて貰うのが得策だろう。