過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第23章 負けた・・・
ナナシは周囲の気配を探りながら馬を走らせていた。
昨日索敵能力が使えなかったのが嘘だったように、
巨人の位置が把握出来ていて、ナナシ自身驚く。
同じ班のミケ達もそんなナナシの変化を感じているのか
昨日より幾分安堵した表情で見守っていた。
「初列四方面」
「初列十方面」
「初列十三方面」
ナナシが独り言のように口ずさむと、
まるでそれに呼応するようにその方向から
巨人発見の信煙弾が上がり、ミケ達を驚愕させた。
「ナナシ、索敵能力が復活したの!?」
ナナバがそう声を掛けたが、ナナシは難しい顔をしながら
首を横に振り「わからない」と告げた。
「また索敵能力が失われるかもしれないから、油断はしないでくれ」
「わかったよ。でも巨人を発見したらすぐに教えてね」
真剣な表情でナナバが頷くのを見て、
ナナシも気を引き締めて索敵をしながら馬を走らせた。
その日は結局、荷馬車に損害が出ること無く行軍する事が出来た。