過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第22章 許せないのは・・・
「先程リヴァイがこの部屋から出て行く所に出くわした。
そして、君を抱いた事を告げられた」
「リヴァイは・・・何も悪くない。私が迷惑を掛けてしまったんだ」
「リヴァイは、君は何も悪くないから責めるなと言っていたよ」
「・・・・・・・・」
「君の質問に答えようか。『怒らないのか?』という君の問いに対して
私が出せる答えは『怒れない』だ。私は調査兵団団長として
心を乱した君とリヴァイの行為が壁外調査において
『必要』と判断した。よって、私に怒る資格は存在しない」
「・・・っ!」
エルヴィンの感情を削ぎ落とした言葉に、ナナシは息を呑む。
目の前にいるのは第十三代調査兵団団長エルヴィン・スミスであって、
いつもの彼ではないのだ。
彼の言葉に僅かに傷ついたナナシが俯いたまま無言を貫いていると、
また大きく息を吐きだしたエルヴィンが「だが・・・」と続けた。
「あくまでそれは『調査兵団団長』としての回答だ。
エルヴィン・スミス個人としては腸が煮えくり返る程
腹立たしい。リヴァイや君にも怒りを感じるが、
何よりそれを許している自分が一番許せない。
いっそ職務を放棄してしまえればと思った程だ。
だが、私にそれは出来なかった」
エルヴィンはナナシの身体を抱き締めると、
その肩に顔を埋めた。