過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第22章 許せないのは・・・
「最初に言っておくが、あいつは何も悪くない。
俺が勝手にやった事だ。だから、あいつを・・・」
「『責めるな』とでも言いたいのか?おまえに言われずとも、
そんな事はわかっている。今のナナシがおまえに
抵抗出来たとは思えないからな」
「・・・・・・・・・」
「明日の行軍に支障を来す程、抱き潰していないだろうな?」
「あぁ・・・」
「そうか、ならば良い」
エルヴィンの言葉にリヴァイは一瞬だけ目を見張った。
どんな形であれナナシを抱いたリヴァイに、
まさかエルヴィンから「良い」と言われるとは思わなかったからだ。
「まさかおまえからそう言われるとは思わなかった・・・」
エルヴィンは公私を弁えたのだとリヴァイにもわかっていたが、
本音を零さずにはいられない。
リヴァイはエルヴィンのそういう所を尊敬しているが、
同時に嫌ってもいた。
自分の本音を建前で隠すやり方はリヴァイには出来ないし、
やりたくもないと常日頃から思っていた。
だが現実はそうやらねば生きていけないほど調査兵団には敵が多く、
壁の外では巨人が、壁の中では人間が調査兵団の邪魔をする。
リヴァイは誰にも本音を言えなくなっているエルヴィンが
不憫に思えた。