過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第3章 不運な男
「エルヴィン・・・団長としてのおまえの立場はよくわかる。
だが、捜索願いを出して貰えれば・・・・」
「それは無理だ、ナイル」
ピシャリと言い切ったエルヴィンに怪訝な表情を向けると、
彼は出せない理由を告げた。
「ナナシには恐らく戸籍が無い。犯罪者でも無いのに
戸籍が無い者を捜索出来るのか?」
ナイルはグッと奥歯を噛み締めた。
エルヴィンの言う通り、憲兵団が捜索するのは戸籍があり
身元がハッキリしている者か、犯罪者として
指名手配されている者のみに限られている。
ぶっちゃけて言えば、戸籍がない者・・・例えば地下街の住民などは
「存在しない者」として扱われているのだ。
存在しない者に人権は無い。
だから、エルヴィンが捜索願いを出したとしても、
それは私情になってしまう。
ナイルはエルヴィンが深く考えて出した結論に
口を挟んだ自分を恥じた。
エルヴィンはいくら変人でも多くのことを考えているのだ。