過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第3章 不運な男
「・・・・なぁ、エルヴィン。おまえは本当にナナリーを
愛しているのか?」
その言葉にエルヴィンの眉が釣り上がった。
「愚問だな。俺は昔から彼女だけしか見ていないし、
他の者など愛してもいない。だが・・・」
一回言葉を切ったエルヴィンは辛そうに言った。
「ナナシが銃弾に倒れる一週間程前から、突然避けられ始めた。
ナナシが何を考えているのかわからず、話し合う事が出来ないまま
連れ去られてしまった。今でも俺は後悔している。
何故ナナシとちゃんと話さなかったのか、と。しかし、
臨時教官であるナナシの捜索は私情に当たると判断し、
混乱を避けるため部下にも言えなかった。おまえにも何度か
協力を求めようと思ったが、たかが一人のために軍を動かせと
何故言える?俺にとっては大事な人でも、兵団にとっては
違うんだ。わかるだろう?ナイル」
飲み込んだ言葉にも答えてくれたエルヴィンに、
ナイルは彼の立場や組織の事を思った。
兵団を束ねる団長として考えれば、確かにそうかもしれない。
兵団は私物でも何でもなく、民衆の税金で動いているのだ。
それを教官とはいえ、たかが一人のために動かすなど
あってはならないことかもしれない。
だが、ナナリーは誘拐されたのだ。
民衆の安全を維持する者として、捜索願いを出してくれれば
ナイルだって動ける。
エルヴィンは何故そうしなかった?