過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第20章 エルドの恋愛相談室
「まぁ・・・私が調査兵団にいるのも、あと二ヶ月弱だ。
恋人のフリをしてもらう必要もないか」
ポツリと呟かれた言葉に、エルドは我に返りナナシを凝視する。
目を見開いているエルドを見て、ナナシは苦笑しながら
「そういう契約だからな」と語った。
「私は元々半年契約でここにいるのだ。契約が終われば速やかに
ここを去るつもりでいる。私がそれまでエルヴィンと
深く関わらなければ良いだけの話だったのに、
妙な話をしてすまなかったな、エルド」
「・・・・いえ」
ナナシの存在が急に遠くなった気がしたエルドは不安になる。
ナナシは調査兵団を去りたいと言っているし、
強い志が無ければここにいる事は辛いだけだろう。
だが、訓練や壁外調査を共にし、団長であるエルヴィンを
凶弾から身を挺して守ったナナシを『契約』とやらで
失うのは嫌だと思った。
何故半年契約なのか、エルドは知らない。
その話題に踏み込んでいいのかもわからない。
エルドにとってナナシはリヴァイと同じくらい尊敬出来る兵士だが、
子供のように無邪気だったりするものだから、
リヴァイや他の幹部よりも話し掛けやすく、
とても身近な存在だった。
わからない所は丁寧に説明してくれるし、
その洞察力と戦闘力は調査兵団にとって無くてはならない存在に
なりつつあるのも事実である。
そんな事言わないで下さい、と言おうとしたエルドだったが、
倉庫の扉が開いている事に気づいて、その言葉は発せられなかった。
「面白い話をしているじゃねぇか、おまえら」