過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第3章 不運な男
「ならば、教えてやろう。ナナシとナナリーは同一人物だ」
「・・・・へ?」
「そのナナシは一ヶ月前私を庇って凶弾に倒れた。
そして、何者かによって連れ去られ、今尚行方知れずとなっている」
ナイルはエルヴィンが何を言っているのか理解するのに
時間が掛かった。
ナナシとナナリーが同一人物で、銃弾からエルヴィンを庇った部下・・・?
しかも、今は行方不明って・・・・。
事の重大さを知り、ナイルはソファから立ち上がって
エルヴィンに叫んだ。
「それじゃあ、病院に搬送したってのも嘘だったのかっ!?
誘拐されてたなんて聞いてねぇぞっ!!」
「当然だ。調査兵団の兵士にも言っていない。
知っているのはここにいるメンバーくらいだ」
「なっ!?・・・何で・・・っ!?」
大事な婚約者が撃たれた挙句、誘拐されたのに
協力を求めなかったんだっ!?とナイルは言いたかったが、
エルヴィンは人に貸しを作るのが嫌いだった事を思い出す。
いや、それにしても・・・大事な者が誘拐されたというのに、
プライドを優先するだろうか?
ナイルはエルヴィンの真意を探ろうと見据えたが、
いつも彼が何を考えているかなどわかった試しがない。
やはり今もエルヴィンが何を考えているかわからなかった。