過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第20章 エルドの恋愛相談室
「それで、ナナシさん的には団長をどう思っているんですか?」
絶対に口外しないから教えて欲しいと言うと、
ナナシは拙いながらもエルドの質問に答えた。
「・・・・好き、だと思う」
じゃあ、両想いって事じゃないですか、と言おうとしたが、
ナナシの表情が曇っていたので言葉を飲み込んだ。
「だが、決して結ばれてはいけないという事情も出て来てしまったので、
私としては距離を置きたいのだ」
「え・・・・」
どういう事だろうか?
エルドの疑問が表情に出ていたのだろう。
ナナシは苦笑しながら、エルドに少し打ち明けた。
「私は昔・・・エルヴィンの血筋の人間を不幸に陥れたことがあるのだ。
私はこれを知られるのが恐い。何も無かった事にして
エルヴィンの傍にいる事など私には到底出来ない。
故に距離を置きたいのだが・・・・」
「・・・そうすると団長が自傷行為に走るので、
それも難しい、と?」
コクリと頷くナナシに、エルドは「そりゃ難しいな」と
更に頭を抱えた。
あのエルヴィン・スミスが職務を放棄して自殺するとは思えないが、
万が一という事もあるし、何よりナナシには
かなり効き目のある抑止力になっているようなので、
きっと団長はギリギリまでこの手を使う気満々なのだろうと
エルドは推察した。
ここで「それは団長の策略です」なんて言ってしまったら、
後でどんな目に合うかわからないので迂闊なことも言えない。