過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第19章 八割まで戻せ
エルヴィンはそんな二人を追い掛けることはせず、
一人残されたナナシを壁際に追い詰めていた。
元々の元凶は目の前にいるこの白い小悪魔だ。
その元凶にエルヴィンが受けた精神的ダメージ分
贖って貰うのが筋というものだろうと、
脳内で自己弁護を繰り広げながらジリジリと
ナナシを自分と壁の間に閉じ込めた。
「ナナシ、君の行動はわざとなのか?私を煽って嫉妬させるのが
君の戦術なら大したものだ。私にはとても効果的だったよ」
「何の事だ?お主の言っている意味がわからぬ。
私はただ二人から血を貰っただけではないか」
カタカタと身体を震わせているナナシは実に可愛らしいが、
エルヴィンはそんな事で追及を止めるほど優しい男ではない。
「目の前で他の男達とのキスを見せつけられた俺が
どんな気持ちだったか・・・君にわかるか?」
「あれは・・・あやつらが望んだ事で・・・」
「そんな望みは無視して、強引に他の所から血を頂いてしまえば良かったんだ」
「血を貰う手前、そういう訳には・・・」
「だからと言って、シモの世話までする必要はなかっただろう!?」
ガンと壁を殴りつけると、ナナシの身体がビクリと大きく震えた。
「俺は怒っているんだ、ナナシ」
「そう・・・らしいな・・・・」
「何故怒っているか、わかって貰えたか?」
「・・・・・・・・・・・」
ナナシは口を一文字に引き結び、黙り込んだ。