過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第19章 八割まで戻せ
「そういや、壁外調査が決定した時おまえはまだ行方不明中だったな。
おまえがいなくなって少しした後、決まったんだ。
実施は今から二週間後ってところか・・・」
「それは初耳だった」
思わずエルヴィンを見遣れば、彼は団長の顔で
「君の傷に障ると思って黙っていたんだ」と語った。
「壁外調査があると不安に駆られ怪我の治りが遅くなる兵士が多くなる。
精神的なものだろうが、万が一にも君をそんな状態に
させる訳にはいかなかった。因みに今の君の身体の健康状態は何割だ?」
「・・・・六割くらいだ」
「そうか・・・あと二週間で八割まで身体を回復させてくれ」
「ちょっと!エルヴィン!!」
ハンジが非難の声を上げたが、エルヴィンは表情を崩さなかった。
その様子を見てエルヴィンは本気で自分を二週間後の壁外調査に
同行させようとしているのだとナナシは悟った。
だが、あと二週間で壁外調査に耐えうる体調に戻るか
ナナシにも自信が無い。
例え体調が戻ったとしても、ナナシはこの二ヶ月近く
訓練をしていないのだ。
万全の調子で臨める状態ではない。