過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第19章 八割まで戻せ
「で?予算配分は決まったの?」
エルヴィンがナナバに先程決まった会議内容を伝える声を聞きながら、
ナナシは少しでも役に立てたのだなと心の中でホッとする。
『迅鬼狼』もこれで少しは浮かばれるだろうかと考えていると、
不意に名前を呼ばれ顔を上げた。
「ナナシ、この多額の寄付金は君から受け取ったものだと
調査兵団内で告知する。良いね?」
「それは・・・」
「安心しなさい。このお金の仔細は伏せておくよ。
ただ、君からの寄付金で調査兵団が救われたことを
兵士達に知らしめ、士気を上げたいんだ」
「・・・・・・・・・」
眉間に皺を寄せて渋ったが、
エルヴィンの兵団の士気を上げたいという気持ちもわかるので、
ナナシは頷くしか無かった。
それに調査兵団の役に立てるならそれも良いかと
思ってきてしまっている自分がいる。
つくづく自分はエルヴィンに甘くなったなと自嘲した。
「士気は上げとかないとねー。拘束兵器は間に合わないけど、
もうすぐ壁外調査だし・・・」
「え?」
ハンジの言葉にナナシは目を丸くして驚いた。
そんなの初耳である。
そんなナナシに気付いたリヴァイが
「何だ、知らなかったのか?」と首を傾げる。