過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第3章 不運な男
「それでナイル?ナナシに何の用事があって訪ねてきたんだい?」
ニッコリと笑うエルヴィンの目が笑っていない事に
始めから気づいていたナイルは「ヤバい」と額に汗を滲ませていた。
今も温和そうな声色を出しているが、
「正直に話せ。でないと酷い目に合わすぞ」というエルヴィンの本音が、
長年付き合っているナイルには嫌でもわかってしまった。
しかも・・・・
チラリと執務室内を見ると、何故かリヴァイ、ミケ、ハンジまでが
恐い顔をして、ナイルを睨んでいるのだから、
意味がわからない。
ナナシって奴は何か調査兵団を怒らせるような事をして
逃げたのだろうか?と考えてしまう。
「おい、薄ら髭。とっとと吐いちまえよ」
「う、うるさい!俺はおまえらじゃなくてナナシって奴に
用があるんだ。いないなら帰るぞ!」
恐喝にもめげず、ナイルが毅然とした態度で逃げを打つと、
ナイルの頬を掠めて短剣が扉に突き刺さった。
元々少なめな髪がはらりと散り、ナイルは恐怖に固まる。
「ナイル・・・俺は今とても機嫌が悪い。これ以上梃子摺らせないでくれ」
ギラリとエルヴィンの目が光ったように見え、
ナイルは心の中でナナリーに謝った。
すまない、ナナリー。
妻と子供がいるのに、俺はまだ死にたくない。
白旗を上げたナイルは罪人の如くちんまりソファに座り、
渋々口を開いた。