過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第18章 寄付してくれた婦人
「それで、どうしたんだ?またエルヴィンがナナシを襲ったのか?」
ミケが心配そうな表情でそう尋ねるのは、
エルヴィンにナナシを強姦した前科があるせいだ。
ナナシが反撃出来るくらい回復したのは大変喜ばしい事ではあるが、
あまり部下の前でエルヴィンの醜態を晒すべきではないので
少し困る。
それについてナナシが言い淀んでいると、
違う世界に旅立っていたエルヴィンがハキハキと饒舌に語り始めた。
「それが聞いてくれ、二人共。ナナシから私にキスをしてくれたんだ。
良いか、大事な事だから二回言うぞ。『ナナシから私に』
キスしてくれたんだ!この重要性が君達にはわかるか?
いや、わからないで良い。ナナシの可憐で柔らかい慎ましやかな唇が
私に触れた事実だけわかれば良い。君達がそれを
堪能したいなどという馬鹿げた妄想を抱く前に砕いておくぞ。
もしも、ナナシの唇に触れたら貴様らの大事なアソコを
ナナバにちょん切ってもら・・・ゴフッ!!」
後半から不穏な空気を醸し出し、
支離滅裂な事を言い出したエルヴィンの頭上に
ナナシの拳が落とされ、強制的に黙らせる。
全く何を意味不明な事を言っているんだと呆れながら、
リヴァイ達に視線を向けると彼らは目を剥いてナナシを凝視していた。
一瞬、団長であるエルヴィンに拳を落としたのが悪かったのか?
と思ったが、二人の表情からそうではないらしい事は察せられる。