過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第18章 寄付してくれた婦人
「ありがとう。君のお陰で我々調査兵団は前に進める。
君の言う通りどんな金だろうと我々には必要だ。
その経緯を伏せたまま渡そうとしてくれた君の心遣いにも
感謝しているが、私はこのお金が『迅鬼狼』の犠牲から
出来たものだと知れて逆に良かったと思っている」
「・・・・何故だ?」
「彼らが成し得なかった事を我々調査兵団が成してみせると
強く思えるからだ。彼らの犠牲は無駄にしないと君に誓うよ、ナナシ」
なんていじらしいのだろう。
口では『仲間じゃない』『嫌いだ』と連呼していても、
ナナシの行動は調査兵団の為に心を砕いているものだ。
そんなナナシが愛しくて堪らない。
このまま押し倒してしまいたいくらいだ。
だが、その前に・・・・・
「先程言っていた君の愛している人というのは誰の事だ?」
ナナシが誰を愛しているのか、どうしても気になってしまう。
エルヴィン自身嫌われてはいないとわかっているが、
それでもちゃんと言葉に出して言ってもらったことはない。
するとナナシはエルヴィンの腕の中からすり抜け、
「お主に教える必要はない」と言って茶器の片付けを
再開してしまった。