過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第18章 寄付してくれた婦人
「もう・・・何も隠さないで良いんだ。君が『迅鬼狼』の
副長だった事もわかっている。君が行方不明になっている間、
地下街にいるクレイグという老人にも会った。
彼は君が副長だとは言わなかったが、君への敬意や忠誠心から
君が副長だという推論に至った。頼むからもう一人で何もかも
抱え込まないで、私に心を開いてくれナナシ」
ぎゅっと抱き締めてきたエルヴィンに、
ナナシはもうそこまでバレてしまっているのかと身震いする。
エルヴィンにこれ以上何も知られたくないと思う反面、
自分の事をもっと知ってほしいと思う矛盾した考えを
ナナシは抱いてしまっていた。
だから絶対に知られてはいけない情報以外は話してしまっても・・・と、
つい口が軽くなってしまうのは仕方無い事だった。
「・・・・エルヴィン」
「・・・うん?」
腕の中で恐る恐るといった感じで口を開いたナナシの言葉を
聞き逃さないように、エルヴィンは静かに耳を傾ける。
「そのお金は仲間の・・・『迅鬼狼』の犠牲の上に出来た金なんだ。
だから私は使いたくなかったし、その資格も無いと考えた」
「うん・・・・」
「でもお主達調査兵団には金が必要だと思った。
どんなに血にまみれていようと金は金だ。お主ならこの金を
無駄なく有意義に使ってくれると思ったし、
『迅鬼狼』も元を正せば調査兵団と同じ志を持った組織だったから
死んだ仲間も納得してくれるだろうと・・・勝手に思った。
すまない・・・そんな金だと知ればいい気分はしないだろうから、
匿名の形にしたかった」
辿々しく紡がれた言葉にエルヴィンは腕の力を更に強くして
ナナシを抱き締めた。