過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第17章 囚われてしまった
「何故先程私達にそれを報告しなかった?
一歩間違えれば君の命は危なかったんだぞ?」
「自分の身に起こった事は自分でケジメをつけたかった。
やられっ放しというのは性に合わぬのでな。女でも殴っておきたかった」
「そんな理由で・・・っ!?」
エルヴィンはツカツカ歩み寄り、座っているナナシを力強く抱き締めた。
「頼むから・・・そんな無謀な事をせず私達を頼ってくれ。
君の身に何かあったら私は気が狂ってしまう・・・」
一瞬、元々狂った性格をしているではないか、と思ったが、
真剣に心配してくれているエルヴィンには言えず、
言葉を飲み込む。
ギュウギュウと強く抱き締められ肩に顔を埋められると、
エルヴィンが幼子に思えて安心させるように頭を撫でると、
彼はより一層強く腕に力を込めた。
それはまるで子供が親に「見捨てないで、置いて行かないで」と
必死に縋り付いてくるような感覚に似ているかもしれない。
ここでエルヴィンを突き放さなければ、と思うが、
それがなかなか出来ずナナシは固まる。
ふと視線を感じて顔を上げると、
リヴァイとナナバが温かい目を向けている事に気付き、
ナナシは「ヤバイ」と感じた。
このまま流されていては、また以前と同じに戻ってしまう。
それは避けなければならない。