過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第16章 襲われる
「ちょっと殴られただけだ。お主らが騒ぐ事もなかろう?」
「・・・いや、兵団の風紀にも関わる問題だ」
「そうか・・・」
「そうだ」
ナナシは掴んでいたエルヴィンの服を離し、
もう話すことはないというようにプイッと顔を背けてしまった。
折角ナナシが真っ直ぐ自分を見て話してくれたのに、
顔を背けられた事に落胆していたが、
次に発せられたナナシの言葉にエルヴィンは団長の顔を
貼り付けざるを得なくなる。
「兵団の規律に関しては一理ある。四人を締め上げる前に
兵団本部近くにいる不審人物に職務質問をした方が良いかもしれん。
奴らは私を売ると言っていた。という事は近くに
売人が潜んでいるということだ。この芽は今後の為に
潰しておいた方が良い」
兵団内から被害者が出たら大変だからな、と淡々と語るナナシに、
エルヴィンはその件についてもっと詳しく説明するように促す。
人身売買などが兵団で起きてしまったら一大事である。
エルヴィンはナナシから得た証言を頭の中で整理した後、
リヴァイとミケ、ハンジを伴い怪我をした兵士達の元へ向かった。