過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第16章 襲われる
ナナシの答えにエルヴィンは「嘘だな」と思う。
ナナシが殺すつもりなら瞬殺出来たはずだ。
しかし、報告によれば四人とも怪我は酷いが命に別条はないという。
ナナシは自分を傷つけた者にも慈悲深く、
その優しさに内心感動もしていたが、
残念な事にエルヴィンは全然慈悲深くはない。
ナナシが許そうとも、彼を傷つけた者には然るべき報いを
与えてやらないと、煮え滾る怒りが治まりそうになかった。
殺すなんて生易しい。
自ら死にたいと思うようになる拷問を、
ナナシを襲った兵士達に与えてやる!
早速ナナシを襲った四人の兵士達の様子を見に行こうと
立ち上がろうとすると、控えめにナナシの指が
エルヴィンの袖の先を掴んだ。
何かと思ってもう一度腰を落としナナシを見ると、
ナナシは真っ直ぐエルヴィンを見つめて言った。
「馬鹿な事は考えるな」
その言葉にエルヴィンはドキッとしたが、
いつもの笑顔を貼り付け「何の事だい?」と惚けてみせる。
しかし、ナナシは暗い表情でエルヴィンを諭すように言った。