過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第16章 襲われる
ナナシの部屋に飛び込むように入ると、
ベッドに横たわったナナシと治療道具を片付けていたリヴァイが
エルヴィン達を見遣った
エルヴィンはナナシに駆け寄り、視線を合わせるように跪くと
「無事か?大丈夫か?痛いところはないか?」と矢継ぎ早に質問した。
ナナシの腕を取り、手首に残った縄の跡を見て、
エルヴィンはギリリと奥歯を噛みしめる。
また、やってしまった。
大事な時に、ナナシの傍にいてやれず守れなかった。
しかも今度は自分の管轄下での事だ。
地下牢に閉じ籠もっていないで、弱ったナナシと
正面から向き合っていればこんな事にはならなかったはずなのに・・・
と後悔するが、何もかもが遅い。
エルヴィンは団長としての顔を作り、
努めて冷静な声色でナナシに尋ねた。
「・・・状況の報告をしてもらっても良いか?ナナシ」
「エルヴィ・・・っ!」
「今は一刻も早く事実関係をハッキリさせなければならない」
ハンジの制止の声を遮り、エルヴィンが厳しく言い放つと
彼女は口を噤んだ。
ナナシはエルヴィンに従い、何があったか詳細に語った。
「突然、空き室に連れ込まれ・・・服を脱がされそうになったから、
抵抗した」
「抵抗とはどのように?腕と足は縛られていただろう?」
鋭いエルヴィンの言葉にナナシは歯切れを悪くしながらも答える。
「・・・・・私がいつも立体機動で使っている黒い刃は私の影だ。
だから、それで攻撃した」
「殺すつもりで?」
「・・・あぁ」