過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第13章 一生許さないで
ナナシが走り去る足音を聞きながら、
エルヴィンは元いた椅子に座り静かに目を閉じた。
まさか、ナナシがこんなに早く来てくれるとは思わなかった
と笑みが漏れる。
地下牢に長期間いれば、
ナナシからコンタクトを取ってくるという打算はあったが、
お茶とクッキーは予想外だった。
そのいじらしさにエルヴィンが一発でノックアウトされるくらい
破壊力があったと回想しつつ、先程のナナシの姿も脳裏に描く。
数日振りに見たナナシはやはり愛しかった。
ナナシ自身も体調が優れないというのに、
エルヴィンの心配までしてくれる慈悲深さが愛しくて、
鉄格子がなければその小さな身体を引き寄せて抱き、
ついでに唇も奪っていただろう。
鉄格子があって、つくづく良かったと思う。
ナナシに語った言葉は全て本当の事だった。
忘れてしまえるくらいの間柄でいるくらいなら、
憎まれてもナナシの心に生き続けたかった。
それこそ自分が死んでもナナシの心に生き続けられるなら、と。
死して尚ナナシを縛り付けるソロモン団長のように・・・・・。
「明日も待っているよ、ナナシ・・・」
きっとナナシは明日も来るだろう。
「一生そこにいろ」とは言っていたが、
去り際ナナシの顔が赤くなっているのを見逃さなかった。
何て可愛い反応だ。