過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第12章 心の天秤
この微笑は間違いなくエルヴィンに向けたもの・・・・。
強姦された挙句、謝罪一つしないまま地下牢に
引き籠もっている男に対して何故こんなに綺麗に笑えるのか・・・。
以前だったら・・・、
ナナシが自分達と距離を取る前の状態だったなら、
エルヴィンが寄越したメモを破り捨ててもおかしくなかった。
それなのに・・・・・・・
リヴァイがナナシの心の変化を感じ取った瞬間だった。
ナナシの心の天秤は確実にエルヴィンに傾いている。
では何故ナナシはエルヴィンや自分達と距離を取るようになったのか・・・
ナイルに頼んでいた調べ物・・・エルヴィンの出生か何かと
関係があるのだろう。
だが、ナナシは絶対その理由を言わない。
エルヴィンも最中に尋問したが口を割らなかったと語っていた。
弱っている癖に屈しない精神力には感嘆するが、
こういう場合手放しに喜べないなと思う。
「・・・モブリット、持って行ってもらってすまなかった」
「いえ、団長の事が心配でしたので感謝しています。
それに自分もナナシさんからクッキー貰えて嬉しかったです」
「いつもハンジの事で苦労しているようだったからな、
その見舞いだ」
ナナシの言葉にモブリットは「好きでやっている事ですから」
と苦笑してから表情を引き締めて、ナナシに頭を下げた。