過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第12章 心の天秤
・・・まぁ、エルヴィンもヤっちまってるんだから俺が手を出しても・・・・
そういう考えが頭を掠めた時、扉がノックされ
「ナナシさん、失礼致します」と言ってモブリットが入室してきた。
部屋に入ってきたモブリットは、
ベッドでナナシに伸し掛かるリヴァイの姿をみとめ、
口を大きく開けて硬直した。
襲い掛かっているとしか見えない態勢なので、
モブリットが勘違いするのも頷ける。
リヴァイは舌打ちした後、何事もなかったようにベッドから降り、
モブリットに「何の用件だ?」と不機嫌そうに尋ねた。
威圧感あるリヴァイの声に緊張しながらも、
モブリットはナナシへ歩み寄り「団長からです」と言って
一枚の紙を差し出した。
その紙には
『お茶とクッキーをありがとう。君のお陰で仕事が捗っているよ』
と当り障りのない言葉が綴られているだけだったが、
ナナシはフッと頬を緩める。
久々に見たナナシの微笑にリヴァイとモブリットは、
息を呑んだ。
ナナシは普段無表情に近く、あまり笑わない。
笑ったとしても作った笑顔だとわかるものだ。
しかし、自然に出た今の微笑は『本物』で、
ナナシが本当に微笑うとこんなに綺麗なものなのかと思った。