過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第12章 心の天秤
「・・・・悪かった。弱っているおまえにすべきことじゃなかったな。
おまえの口の堅さを忘れていた。だが、俺達がどれだけおまえを
心配していたかは知っておけ」
「・・・・・・・・・・すまぬ、リヴァイ」
リヴァイは不必要な暴力を振るう人間ではない。
今のも不本意な行動だったと辛そうな表情から見て取れたので、
責める気にもならない。
そっとリヴァイの背中に腕を回すと、
何故かリヴァイの身体がビクリと震えた。
それにはナナシもビックリしてリヴァイの顔を見遣ると、
彼は目を丸くし頬を赤く染めていて、いつものクールな
リヴァイではなかった。
子供のようにあどけない表情は正直可愛かったが、
彼は視線を逸らすと「本当に質が悪ぃな」と零した。
「今の無意識だろ?そんなつもり無い癖に誘うような真似すんじゃねぇ」
「そんなつもり・・・・?」
首を傾げたナナシにリヴァイは
「やっぱ一ヶ月経っても鈍感は前のまんまだな」と呆れる。
これはエルヴィンが強姦に走った理由もわからなくもない。
今のナナシはとてもか弱く、いつもの勝ち気な性格が
鳴りを潜めていて庇護欲を掻き立てられるが、
同時に襲いたくなるような色気が漂っているので、
強く自制心を持っていないとあっさり心が持っていかれそうになるのだ。