過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第10章 眷属達の想い
「・・・だが、俺達はナナシとは決して対等になれない。
拾ってもらった時点で、その資格を失っている」
「そりゃ、どういう意味だ?」
ジェリーの言葉に怪訝そうな表情を向けたリヴァイが問い返すと、
彼は紫煙を吐き出しながら遠くを見つめた。
「『主従関係』から逸脱した関係には発展出来ないってこった。
主を決して裏切れない・・・・まぁ、裏切ろうとも思わねぇが、
そこに強制的なルールが働いちまう。ナナシは『神』で
俺達のような下賎な輩がおいそれと手を出して良い存在じゃねぇってな」
「そりゃ、てめぇに度胸が無いってだけじゃねぇのか?」
「・・・・・・・・・・・」
リヴァイの軽口にジェリーは乗ってこなかった。
先程まで子供の喧嘩みたいに罵り合っていたのが嘘のように
黙ったジェリーに、リヴァイとミケは口を噤む。
彼の目が真剣で、とても切なそうに見えたせいかもしれない。
「俺達は・・・あいつと対等でいられるてめぇらが羨ましい・・・」
ナナシとジェリー達にどのような強制力が働くかはよくわからないが、
決して越えられない一線があるのだということは
リヴァイ達にも理解出来た。
ジェリーは黙り込んだリヴァイ達を一瞥すると、
酒瓶を片手に立ち上がり、エルヴィンとジャックのいるテーブルへ
歩き出してしまった。
テーブルに残されたリヴァイとミケが静かにジェリーを見守っていると、
彼はエルヴィン達がやっていたチェス盤をテーブルから叩き落とし、
周囲に聞こえるように「酔っ払った」と宣言する。