過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第10章 眷属達の想い
「・・・命の恩人かなぁ~。行き倒れていたボク達を
拾ってくれたのはナナシちゃんだけだったし、
あのままでいたらきっとボク達は死んでいたと思う」
笑顔で悲しい過去を語るイサザに
ハンジとナナバは何と返して良いかわからなかった。
「ボク達みたいな存在は主がいないと生きていけないんだ。
でも、ボクらは疎まれてて主になってくれる人はなかなかいなくて、
『主になって下さい』って頭下げてもボコボコにされて
領地から追い出されるのが当たり前なんだ。
殺されても文句も言えない、奴隷よりも価値の無いゴミのような存在
・・・それがボク達」
「・・・・ゴミは言い過ぎだ。君はちゃんと生きている。
地下街ではそういう認識かもしれないけど、ここでは違うよ」
「多分、その『地下街』より過酷なところかも。
ボク達のいる所は、服従か死かの二択しか無いからね」
「・・・・そんな・・・っ!?」
ハンジとナナバはイサザが語るあまりにも過酷な環境に言葉を失う。
壁の中で地下街より過酷な領地が存在するとは夢にも思わなかったからだ。
イサザが語るのはこの世界ではなく、
妖の住まう『異世』の世界の事だが、それについて言及しなかった。
もしもナナシが彼女らと再会した時、
不利益な情報を与えてしまっていたら大変だからだ。
「半殺しの目に遭って、行き着いた先が
ナナシちゃんの家の前だったんだ。もう息をするのも
目を開けてるのも辛くて死を覚悟していたんだけど、
ボロ雑巾みたいに転がっていたボクにナナシちゃんが
話し掛けてくれて・・・『うちに来るか?』って言ってくれた時、
涙が出るほど嬉しかった。やっと自分と目を合わせて
話し掛けてくれた存在が愛しくて、それ以来ボクは
ナナシちゃんの恋の奴隷。・・・・・でも・・・・」