過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第10章 眷属達の想い
エルヴィンは一局目より幾分冷静な心持ちで二局目の勝負をしていた。
ジャックの挑発を流せるようになったとも言えるが、
彼は饒舌にエルヴィンに語りかけるのを止めない。
まるで、エルヴィンに何かを伝えたいように言葉を紡ぐ。
「私達『家族』はこのチェスの駒のように
キングを守る存在なのかもしれません。
キングを守るためにはどんな手段も辞さない・・・
それが例え捨て駒のような役割でも」
「・・・・・・・・・」
「丁度私達はチェスの駒のように五人います。
クイーン、ルーク、ビショップ、ナイト、ポーン・・・
誰がどれという訳ではありませんが時々考えさせられるのです。
もしもキングを一人残してしまったら、と。」
その言葉にエルヴィンがジャックの顔を盗み見ると、
彼は悲しそうな表情で駒を見つめていた。
「キングは一人になっても戦う事を止めない。
ならば駒である私達が生きている内にやっておくべき事があると
考えるのです。・・・・そう、例えばキングがキングとしてではなく、
盤上でも無いどこかで誰かと生きていくというのも一つの道ですね」
「・・・・それは・・・」
それは、ナナシを自分達に預けても良いと言っているのだろうか?
エルヴィンが口を開きかけたが、その前にジャックが
被せて言葉を続ける。
「しかし、駒である我らの代わりにキングを守れないような方達には
大事な主を託せません。人選は慎重に行うつもりですよ」