過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第10章 眷属達の想い
「うわぁ~、何で皆殺気立ってるのかな?もっと平和的に行こうよ~」
トランプ勝負をしていたイサザが別テーブルの様子に
身震いしながらそう呟くと、同じテーブルにいたハンジとナナバは
肩を竦めた。
イサザの意見に同感であるが、
挑発しているのはそちら側だろうという言葉は
目の前の好青年に言い辛い。
このテーブルは他のテーブルと違って平和だった。
トランプでポーカーをしているが、
イサザからはイカサマをしている様子も無いし、
挑発らしき言葉も投げかけてこないので、
純粋にカードゲームを興じているのと同じ状況だ。
なので、ハンジ達には相手を観察する余裕も生まれてくる。
ハンジはチラリとイサザの隣に置かれている人形に目を遣り、
どういう仕組みで動かしていたのか尋ねた。
イサザは笑顔でハンジの問いに答えてくれたが、
聞きなれない言葉が多くてハンジの探究心に火が付き、
トランプ勝負どころの話ではなくなる。
「あたし達には見えない糸の成分って何っ!?
是非今出して欲しいんだけど!あ!サンプル欲しいから
瓶で持ち帰っていいかなっ!?おーい、リヴァイ!
空き瓶あったら頂戴~!!」
「ちょっと、ハンジ!落ち着いて!!」
このテーブルで一番質が悪いのはハンジだった・・・・。
機嫌がすこぶる悪いリヴァイに豪速球で空き瓶を投げつけられたが、
それを難なくキャッチし、瞳孔が開いた眼でイサザに詰め寄る。
「さぁさぁ、早くこの中に人形を操った糸を出してよ!
巨人の研究にも役に立つかもしれないからさぁ!」
「こ、恐いよ、メガネのお姉さん!助けて、金髪のお姉さん!!」
「どうどう、ハンジ。この子、本気で怖がってるから・・・」
ポーカーの勝負がハンジのせいで一時中断となった。