第8章 08.都大会
亮はコートから結構離れた大きい木の下に座っていた。
木に寄りかかるようにして、顔にはタオルがかけられていた。
私は近くの自動販売機でスポーツドリンクを買った。
亮に気づかれないように、ゆっくり近づいて、首元に買ったばかりの冷えたスポーツドリンクを当てた。
宍「ぅわ!?」
亮は相当驚いたようで、顔にかかっていたタオルを落としていた。
宍「な、んだよ…お前か…」
『私で悪かったね。理恵のほうがよかった?』
宍「は、はぁ!?」
顔を真っ赤にする亮を見て図星だったらしいことはすぐわかった。
知ってたよ。亮が理恵のこと好きなことくらい。
見てれば分かる。
宍「…何しにきたんだよ。」
『…慰めに?』
宍「なんで疑問系だよ…ほんっと…情けねぇ…」
力が抜けるように、亮の表情も沈んでいく。
私はそんな亮の隣に座る。
宍「なんだよ。一人にしてくれ」
『それは、できないなぁ…』
私は亮の頭を自分の肩に寄りかからせる。
宍「なにすんだよ!?」
『いいから。大人しく寄りかかりなさい』
亮はしばらく抵抗をしたが、私が力を緩めず、むしろ両腕で亮の頭を抱えるようにして抱きしめると、諦めたのか、大人しくなった。
宍「なんでだよ…何なんだよ、お前…」
『ただのマネージャーだよ。』
宍「…そうかよ。」
そうして私はしばらく亮を抱きしめていた。
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宍「いい加減離せよ」
『ん。』
亮を解放するとなんだかスッキリした表情になっていた。
『落ち着いた?』
宍「ああ…」
亮は私と視線を合わせずに、再び気に背を預けるようにして大きく深呼吸をした。
私も亮の隣で背を気に預けた。
『宍戸は…諦めちゃうの?』
宍「…いきなりなんだよ?」
空を仰ぎながら亮に話し掛ける。
『…だってさ、勿体無いじゃん。』
宍「勿体無い…?」
亮の言葉に私は頷く。
『私は亮が人一倍練習してること、知ってるよ。すごい努力家。努力出来ることは才能だと、私は思うな』
宍「…」
『私はみんなより亮と出会ったのは遅いけど、そんな私でも分かるもん。景吾はもちろん、長太郎あたりも気づいてそうだよ…ほら。』
私は塀に身を隠している長太郎を指差した。
長太郎もビクッとはしていたが、観念して出てきた。
宍「長太郎…お前…」
鳳「す、すいません、宍戸さん。」
宍「いや…」