第2章 02.マネージャー
?「…で、あいつは誰だ?なにを渡された?」
私はなぜか、マンションのエントランス脇の茂みで、このオニーサンに壁ドンをされていた。
『だ、だから!あの人は部活の部長で…貰ったのは鍵…』
?「は?部活?鍵?俺はそんな事聞いてねぇぞ。」
『みんなには話したって…!仕方ないじゃん、なつ兄は一緒に住んでないんだから…っ!』
そう、この人は私たちとは別に住んでいる兄弟の一人、朝日奈棗。
そんななつ兄は心底不愉快そうに表情を歪める。
棗「部活って何してんだよ?」
『て、テニス部のマネージャーを…」
棗「なんで、"男子"テニス部なんだ。部活をやりたきゃ、他にいくらでもあるだろ?」
『り、理恵にお願いされて…。とりあえず、一週間試用期間でやることに…』
棗「理恵…?ああ、お前の親友か。」
『そうそう!なかなか断れなくて…やるからにはちゃんとやりたくて…』
なつ兄はなんとなく納得してくれてるようだった。
棗「…で、その鍵は?」
『これは部室の鍵だよ』
私は鍵をなつ兄に見せると、なつ兄はなんだかほっとしたような表情をしていた。
なつ兄は小さなため息を吐くと、私から離れた。
棗「悪かった。強引なことしたな。」
なつ兄はいつもの優しい表情に戻り、私の頭をぽんぽんと撫でてくれた。
いつものなつ兄に戻ってくれたことで、私はほっとすると、なつ兄は真剣な表情で、私の頬に手を添えた。
棗「ただし、気をつけろよ。」
『なにを?』
棗「男子テニス部ってことは、男だらけだろ?」
『うん?』
棗「……とにかく、気をつけろ。何かあったら俺に連絡しろ。分かったな?」
『……?分かった。なんかあったら一番になつ兄に連絡する』
棗「ああ、そうしてくれ。じゃ、俺は帰るからな」
なつ兄はそう言ってその場を去っていった。
『(……?なんか用事があってウチに来たんじゃなかったのか?)』
私は去っていくなつ兄を見届けながらそう思った。
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棗「…あ、あいつに渡すの忘れた…。まぁまた来ればいいか…」