第5章 【誕生日編】
誕生日の直前に喧嘩した。
喧嘩というか、彼女が一方的に怒っている。
「英二先輩・・・最低・・・」
「・・・ほえ、な、なんで!?」
放課後、部室で璃音にそう言われた。
なんで最低なんて言われたのか全く分からない。
とりあえず、分かっていることは、オレの大切な彼女が泣きそうな顔で怒っているという事。
そんな顔をされても、全く心当たりが無いんだけど・・・?
「英二・・・最低だって。」
「いったい何したんすか?」
「可愛い彼女、泣かしちゃいけねぇなぁ、いけねぇよ。」
現役の後輩たちも、引退してからもなんだかんだと部室に集まる3年生も、その璃音の言葉を聞きつけて、オレたちの周りに群がってくる。
「しんないよ!、オレ、何かした!?」
そんなオレの問いかけに、璃音は何も答えずに、必死に涙をこらえている。
昨日はメールの返信がなかった。
朝はいつものように家まで迎えに行ったけど、既に登校した後だった。
昼休み、いつも一緒に食べる弁当も待ち合わせの場所に来なかった。
おかしいなぁ?と思いながら、やっと放課後、部室でつかまえて、わけを聞いたら突然このセリフ・・・
「ゴメン、本当にわかんない・・・」
「信じられない・・・!」
信じられないと言われても、オレにとっては、この状況が信じられない。
「小宮山さん、英二、本当に心当たりがないようなんだけど・・・理由を教えてくれないかな?」
黙ってそのやりとりを聞いていた不二が見かねて理由を聞いてくれた。
「・・・でも・・・」
「理由を聞かないと何も解決できないよ?、僕でよければ相談にのるし・・・ね?」
不二は笑顔で小さな子どもを諭すように説得をしている。
あの笑顔は正直、この状況を楽しんでいるとしか思えないけれど、とりあえず、璃音の気持ちが知りたいから今は我慢しよう。