第2章 conspiracy
『何かあればすぐに連絡しろ。いいな』
そうして切れた携帯を眺めながら、理仁は息を吐いてそれを遠くへとやった。畳に寝転がってみると、特有の香りが鼻を掠める。遠くで風が木々を揺らす音がして心地よい。静かで平和で、驚くほど何もないけれど。
襖から漏れていた淡い太陽の光は、徐々に失われ部屋も薄暗くなり始める。
なんだか慣れないところに来て、色々あったせいか身体は水中にいる時のような重たさを持ってしまって、上手くもう動かせなくなっていた。瞼が重くて、思うままに目を閉じた。すぐに眠りは訪れて、理仁は深く深く沈んでいく。
ゆっくりと意識を手離したところで、すっと理仁の部屋の襖が開けられた。
「おい……」
少しだけ低い声が、部屋に入り込む。けれど既に夢の中へと沈んでいる理仁には、その声は聞こえていない。
「寝ているのか」
姿を見せたのは山姥切だった。足音を立てないように中に入り、襖を閉める。ゆっくりと近付いてみれば、瞼は閉じられ静かな寝息を立てている理仁が畳に横たわっていた。
「おい、風邪……引くぞ」
気持ちよさそうに呼吸を繰り返している理仁に、山姥切は呆れたように溜息を吐いた。
「無防備に寝る奴があるか。斬り殺されたいのか」
そっと理仁へと手を伸ばすと、瞬時に理仁の手がそれを拒むように山姥切の腕を掴んだ。