第31章 仲直り
私は仕事が終わると急いで
約束の場所に向かっていた
一刻も早く彼に会いたかったからだ
少しでも早く会って
また会える二人になったと確認したから
その気持ちが私の足を速く動かせていた
海水浴に来てる人を
避けるように私は足を進めていた
やっと約束の場所に来て愕然とした
彼の姿はどこにもなかったのだ
彼が嘘を付くとは思えずに急いで周りを見渡したが
やはり彼の姿は見えなかった
やはり夢だったのか?
私の胸に疑問が浮かぶ
彼に会いと願っていたから
その気持ちが見せた幻だったのかもしれない
私はその場に泣き崩れてしまった
涙が次から次からこぼれていた
自分の感情を止める事ができなかった
泣き声を抑える為に手を口に押えて
声を殺すことしかできなかった
私は二度と彼に会う事はないのだろうか?
自分がした事だが
悲しみが奥から奥から生まれてくる
会えると期待してただけ悲しみも大きかった
私はだた、悲しみに押しつぶされていた
安田「ゆめちゃん.....」
私は泣きながら驚いて振り向くと
上半身裸で水浸しになって立っている彼がいた
「や、やすださん.....」
私は泣きながら見つめていた
安田「どないしたん? 何で泣いとるん?」
彼は驚きながら私を見下ろしていた
私は言葉に出来ずに静かに首を振った
すると彼に私の横にしゃがむと優しい声で
安田「恋人の島まで泳いで行ってたんや」
「えっ?」
安田「ゆめちゃんと行くのにさ
行けんかったらカッコ悪いやろ?」
「安田さん......」
私は涙目で微笑んだ
安田「やっぱさ、距離があるから
ゆめちゃんには浮き輪がいるで」
そう言うと頭を軽く撫でた
私は彼の優しさを感じて胸が熱くなっていた
「よ、用意しないとダメですね....」
涙を拭きながら答えると
安田「で、なんで泣いてたん?」
彼の問いに私は俯いた
彼が居なかったから悲しかったと
伝えるべきなのか
そんな情けない女だと知られていいのかと
私は迷っていたから