第30章 幻
私は、何が間違っていたのかと不安になった
私の顔が悲しみの色に変わっていった
「安田さん......」
名前を呼ぶのが精一杯だった
その声に彼の手がそっと動いた
私の身体が反射的にビックと動く
安田「次、他の男に触れたら許さんからな」
その言葉と同時に私を強く抱きしめたのでした
「や、安田さん....」
私の目から涙が後から後から溢れてきた
安田「ここでさ、これ以上したら
ゆめちゃんがもう働けんくなるから
仕事が終わる頃に海で待ってるわ
何時に終わる?」
「今日はこれだけなので、昼過ぎには」
彼は腕時計を見ると
安田「分かった、待ってるから」
そう言うと抱きしめていた私を離すと
彼は優しく微笑み
背中を向けて出て行こうとした
「安田さん!」
私はその背中に不安を感じて呼び止めた
そんな私の気持ちを察したのか
安田「おん、大丈夫やで、待ってるからさ」
そう私に告げると彼は店から出て行ったのだ
私は今の出来事が夢でしかなかった
彼が出て行った後も
私は信じる事が出来ずにいた
今、見た幻に胸を痛め続けていたのでした
あの夜の悲しみが私の胸をまだ
埋め尽くしていた