第27章 照れ臭い時間
彼は髪の絵の具を落とす為に
シャワーを浴びていたので
私はご飯の支度をしていた
私の髪はまだ絵の具が付いていたが
じゃんけんをして勝った彼から
落とすことになったのだ
ご飯が出来上がる頃には
彼が濡れた頭を拭きながら出てきのだが
上のシャツは洗濯していたので
上半身だけが裸のままだった
分かっていたが
私はそれに驚いてなるべく見ないように
目線を下に向けて声を掛けた
「あの、良かったら先に食べててください
私も入って来ますので」
安田「いや、待ってるよ
つうかゆめちゃんの髪の絵の具
すっかり乾いてもうたんちゃうん?
落ちるんかなぁ?」
彼は優しい手つきで私の絵の具の付いた
髪を触った
私の心臓がすごい音を立て始める
「そ、そうですね、じゃ、入ってきますね」
私は自分がパニックになりそうに
なっているのが分かったので
急いで彼の元から離れてお風呂場に走った
恋愛などした事のなかった
私の心臓は耐えられるのか本気で心配になっていた
「はぁ...どうしよう....」
私は自分を落ち着かすようにシャワーを
浴びていた
アイドルをやってる男前が部屋にいるだけでも
すごい事で
服が乾くまであのままでは
私の心臓はいつ止まってもおかしくはなかった
彼が言うように、髪の絵の具は乾いていたので
なかなか取れなかった
何度も何度も洗ってやっと落ちたので
私はお風呂場から出ると
彼は私の本棚から一つの雑誌を取り出して
真剣に読んでいた
「安田さん.....」
私が呼びかけると彼は雑誌から目を離した
安田「なぁ、ゆめちゃんこの人見てや?」
そう言うと持ってる雑誌を私に指さした
指された所を見ると私は驚いた
「えっ、この人って!」
安田「なぁ、やっぱりそうやんなぁ」
私は何度も頷いた
その雑誌に載っていたのは
さっきの海岸で会った年配の男性だったのだ
安田「なんか、めっちゃ世界的に
有名な画家さんみたいやで
俺、読んでたんやけどさ」
私は言葉が出ずに驚き続けていたら
彼は微笑みながら
安田「すごい人に褒められてやで
めっさすごいやん!」
「えっ?」
そう言うと彼は私に優しく微笑んでいた