第3章 【暁のヨナ】蜂蜜の誘惑▶︎ハク
これ以上、望む事など、、、、
何もないはず。
なのにあんたを見る度に、求めずにはいられない自分がいるんだ。
「これを患部に塗ってしばらく置けば、自然にトゲはでてきますよ。」
海賊の試練とやらで、木のトゲが刺さった掌に、ユンの荷物から拝借してきた蜂蜜を塗る。
一国の姫とはまるで思えない傷だらけの身体。
過酷な目に遭っても決して弱音をはかないくせに、こうやって掌に刺さったトゲの痛さで、俺の前で、涙を浮かべた目で見つめてくるなんて。
反則すぎるっての、、、、
「何泣いてるんですか。」
『、、、、、なんでもない!』
涙を隠すように袖でゴシゴシと目を擦って、気丈に振舞おうとしてくる。
「ほらほら、目擦るから、赤くなってますよ。」
擦ろうとする左手を掴んで、赤く腫れた目元にキスをする。姫さんの驚く顔を見て、自分がやらかしたことに、俺は後から気づく。
(、、、、やべ、、、何やってんだ、俺。)