第10章 また、うまれるころには
果てた後も僕に幾度となく啼かされ続けた有希ちゃんは…今、僕の腕の中で疲れ果ててぐっすりと眠っている。
可愛い寝顔にどうしても僕の頬は緩んでしまう。
我慢出来ずに有希ちゃんの頬を指先で擽ると
「……………ん」
と声を出して身を捩る。
その仕草が堪らなく愛おしい。
ねえ……有希ちゃん。………僕を許して。
僕はきっと君を一人にしてしまう。
だから残しておきたいんだ……僕の忘れ形見を。
そんなのは僕の自分勝手な我儘だって分かってる。
有希ちゃんをもっと悲しませる事になるかもって……分かってる。
でも僕は…また君に忘れられてしまうのが何よりも怖いんだ。
怖くて怖くて仕方がない。
静かな呼吸を繰り返し、緩やかに上下する有希ちゃんの滑らかなお腹にそっと手を当ててみる。
今夜……君の中に宿ってくれてるといいな。
そうすれば、僕は間に合うかもしれない。
僕の子を抱いて幸せそうに微笑む有希ちゃんの姿を見られるかもしれない。
有希ちゃん……もう二度と僕を忘れないで。
僕の身体が朽ちても、僕の心は永遠に君のものだから……。
小さくて温かい有希ちゃんの身体を少し抱き寄せる。
本当に心から君を………
「……愛してる。」
そう呟いて、有希ちゃんの額に口付けたまま……
僕はそっと目を閉じた。
了