第3章 出会い
「…ト……セト!」
「ぅえっ!?は、はいっす!!」
キドの声に驚いて、大声を出してしまった。
お、起こしちゃったっすかね…
そーっと彼女を見てみると、静かに寝息を立てている。
ホッと息をついた。
キドは呆れたような顔をしながら、俺に聞いてきた。
「なぁセト。こいつの名前、なんていうんだ?」
……あ。名前…
「…分からないっす。聞くような場面でもなかったっすから…」
「…そうか」
しばしの沈黙。
先に口を開いたのは、キドだった。
「とりあえず、こいつをちゃんとベッドに寝かせてやらないとな。空き部屋…まだあったか?」
「確かあったっすよ。ちょっと狭めっすけど」
「それなら、一旦そこに寝かせよう。セト、運べるか?」
「もちろんっす。じゃあ、連れて行くっすね」
「ああ、頼む」
了解っす。と言って、彼女を抱きかかえる。
空き部屋は、一応掃除と装飾は施してある為、こざっぱりしていた。
落ち着いた色の壁紙、窓際にぽつんと置かれているベッド、そして机と椅子。
広々としている気がした。
ベッドにそっと彼女を寝かせると、「……ぅ…」と小さいうめき声が聞こえた。
今度こそ、起こしちゃったっすかね…?
彼女の顔を覗き込む。
だが、起きる気配はない。
そのかわり、口が小さく動いている。
何か呟いているようだ。
そっと、耳を近付けた。
「……ごめ……なさ…、い…」
そう呟く彼女の目からは、一筋の涙が頬を伝う。
「…何か、辛いことがあったんすね…」
彼女の涙を指で拭い、優しく頭を撫でる。
少しほっとしたような顔をした彼女を見届け、俺は自室に戻った。