第6章 ◆名取の札 (弐)
さなの言葉に李雲様が
その場に膝から崩れた。
〝本当の本当に…
本当にっ、凪雲なんだなっ?〟
「 そうだよ、李雲。」
ボロボロと目から涙を零し
李雲様は叫ぶように何度もさなへ
本人確認を繰り返す。
そのやりとりが少し続き
李雲様も理解できた頃、
〝凪雲、ごめんよ。
僕は、凪雲を守れなかった念を
復讐と言う形で人間に当ててたのかもしれない。
凪雲があれ程好きだった人間に…。〟
李雲様の言葉を聞き
さなは目の前の李雲様の頭を抱き締めると
うんうん、とだけ相槌をし
李雲様の言葉を受け入れた。
「 李雲、
回復が遅くて今になっちゃったけど
また守っていこうね。」
〝凪雲・・・。〟
ー夕焼けの陽射しが疎らに差し込む頃、
その陽射しが李雲様とさなの涙を照らし
何本もの筋が光っては消え
その繰り返しが何度続いたかは人知れず
涙が流れ終えた頃には
外は暗闇に満たされていた。
〝お前たち。〟
凪雲様を社に戻すべく
皆ぞろぞろと鳥居の所までやってくると
李雲様が先に口を開く。
その言葉に皆が李雲様の方へと振り返ると
〝その…悪かった。〟
少し語尾を濁らせながらも謝罪を伝えると
聞いていた皆の表情にふっと笑顔が広がる。
「こちらこそ、
此度は我が名取家の失態により
多大なる迷惑を掛けしてしまい
お詫び致します。」
名取だけがその場できちりと頭を下げた。
そして、社の前につくと
さなが前に立ち
「 助かったよ。
体を貸してくれてありがとう。」
そう言い終わると
さなの体からすぅっと何かが抜け
そのまま社の中へと入り込んだ。
その瞬間、さなは意識を失い
その場に崩れると
「おっと。」
名取に受け止められそのまま
横抱きに抱えられる。
〝世話になった。
最後にひとつ、
その巫女さん、
誰かに狙われてるよ。〟
「さなが、狙われる…?」
夏目が首を傾げると
〝守ってやってよ。〟
それだけを言い残し
李雲様はそのまま姿を消した。